第87章

木下逸夫が立ち去ると、丹羽光世は直接二階へ向かい、夏目冬馬は一階に残って待機した。

 木下逸夫はあらかじめ家中のすべてのドアを開けさせており、島宮奈々未の寝室の鍵すらもドアに掛けられたままになっていた。

 ドアの前に立った丹羽光世は、木下逸夫のこの計らいに満足げな表情を浮かべた。

 そっとドアノブを回し、足音を忍ばせて中に入る。

 島宮奈々未と夏目太郎はすでに眠りについていた。夏目太郎は夜中に目を覚ます癖があるため、枕元には小さなナイトランプが点っていた。

 ベッドの傍らに立ち、布団の中で安らかな寝息を立てる二人を見下ろす。頬を寄せ合うようにして眠るその姿を目にした瞬間、丹羽光世の...

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